学部では「応用解析」「システム制御1」「ロボットシステム」、大学院では「知的制御システム特論」「科学技術英語」を担当されている小中英嗣先生に、ご自身の研究と学生たちの印象についてお聞きしました。
2022年12月、久々の国外出張。大学院生の研究発表(国際会議)でシンガポールに行きました。
先生の自己紹介をしていただけますか?
生まれてから学校・仕事すべて名古屋で過ごしています。電気系の大学・大学院で学んだ後、名城大学と縁があり大学教員になれました。途中外に出る機会はあったと思うのですが、名古屋の引力の方が強かった。土地に縁があると思っています。
仕事柄出張が多くその影響で旅行が好きです。定番の観光地から、(試合をしていなくても)スタジアムめぐりなどを楽しんでいます。あと、学生時代クイズを嗜んでいましたが、昨今のクイズブームに驚いています。
2019年夏、スポーツデータ研究の発表でアテネに行きました。
第1回近代五輪の会場となったパナシナイコスタジアムは市内中心部にあります。
先生の専門分野とその面白さを教えてください。
今の専門は大きく分けて二つです。一つ目は学生の頃から続けている「システム制御工学」。現象の規則を数学を使って理解し、目的を達成する仕組みを設計する学問です。もう一つは趣味のスポーツ観戦を延長させた「スポーツデータアナリティクス」。
スポーツの計測データからチームや選手の実力評価、ランキング作成などを行っています。どちらも数学とコンピュータを使って現実をより明確に理解できることが面白さですね。
公開されている約2000試合40000本のシュート位置のデータから、
場所ごとのゴールの難しさ(ゴール期待値)を計算できます。
最近の研究テーマを教えてください。
スポーツの様々なランキングを、公開されているデータから作成しています。勝敗や得失点から実力ランキングを作るとそれを勝敗予測にも活用できるようになります。ここしばらくはオリンピックや複数の競技で継続的に予測を公開しています。
また、試合中の細かな記録に基づき、チームスポーツでの個人ごとの貢献の定量化(具体的な数値で表すこと)にも取り組んでいます。
東京オリンピック(2021年)の球技10種目のメダルを、過去数年の国際大会の得失点から予測しました。
日本女子バスケの銀メダルが会心の予測でした。
学んだことや身につけたスキルは、卒業後にどのように役立つのでしょうか?
数学的な法則や根拠を学ぶことで、現実の解釈が豊かになります。見た目の相違にとらわれず、背後にある法則の類似性に着目できるようになると世界に対する解像度がぐんと細かくなるはずです。
また、きれいな法則がある現象(物理など)と、そうでもないもの(社会システムなど)の区別ができ、それらへの異なる対処法がわかるようになることは今後の人生の指針になると思います。
名城大学情報工学部の学生たちの印象を教えてください。
入学のためには受験にそれなりの準備が必要な学部ですので、勉強してきた量はある程度の水準を満たしている学生が多い、という印象です。
大学では高校までの勉強を「使う」のですが、そこに対する意識の切り替えは個人差が大きいようですね。大学生活を自分自身をより良いほうに変えるために活用してほしいと思います。
国外渡航も元通りになりつつあり、研究発表で国際会議に出かけています。2023年初夏に訪れたブダペストは素敵な街でした!
学部では「感性情報処理」や「グローバルゼミナール」、大学院では「視覚・色彩情報処理論」を担当されている川澄未来子先生に、ご自身の研究と学生たちの印象についてお聞きしました。
2020年度の研究室のメンバーと一緒に。川澄未来子先生(右)
先生の自己紹介をしていただけますか?
学部は数学科、大学院は物理情報システム専攻の出身です。豊田中央研究所(トヨタグループの研究所)でニューラルネットワークや色彩情報処理の研究に12年間携わった後に大学教員になりました。
研究でも私生活でもタイやシンガポールを頻繁に往復しているので、情報工学部の海外研修の企画・引率も担当しています。名古屋は小中高校生活を送った地元です。学生時代は体育会ホッケー部、企業時代はスキー部、最近はゴルフや自転車、と体を動かすのが好きです。
愛車のBROMPTONで研究室に出勤することもあります。
先生の専門分野とその面白さを教えてください。
専門は、人間の感覚や感性をモノづくりに活かす「感性工学」です。扱う対象は、クルマ、家電、照明、通信デバイス、Webサイト、化粧品、農作物、街の景観、スマートシティなど多様で、企業や自治体など学外の組織と共同で進める研究が多いです。
研究室側が有する感性計量化・分析・設計の技術(シーズ)と、学外の社会課題(ニーズ)とがうまく結びついて、共通の目標を協働して成し遂げた時、大きな醍醐味とやりがいを感じる分野です。
最近の研究テーマを教えてください。
自動車部品メーカとは、車室内の照明空間における感情の変化をVRゴーグルを使って調べる研究、材料メーカとは、多層クラッド鋼によるダマスカス模様の包丁に新たな感性価値を付加する研究などに取り組んでいます。
VRゴーグルを使った照明空間の感性評価研究(企業との共同研究)
包丁の外観にこれまでにない価値を付加する研究(企業との共同研究)
愛知県農業総合試験場とは、特徴的な肌色の表面色を持つ名古屋コーチンの卵の色彩を測定した時に魅力スコアを視覚的に示すシステムを開発中です。感性の中では捉えるのが難しいとされる「美」を定量化・モデリングする研究にも取り組んでいます。
名古屋コーチン卵殻測色システムを試作(愛知県との共同研究)
大学で学んだ専門分野や身につけたスキルは、卒業後にどのように役にたつのでしょうか?
4年生以降の研究活動では、エンジニアとして社会生活で必要となる一連のプロセス(従来研究の調査、仮説の立案、実験の企画、方法の選定、結果の科学的な分析や考察、報告の執筆、スケジュールや予算の管理など)を経験します。
情報共有やディスカッションを繰り返しながら、道なき道を切り開くのは容易ではありませんが、学外の研究者と繋がりながら、役割を決めてグループで成し遂げる経験は、どの分野の社会でも即戦力となります。
歩行者とコミュニケーションする自動運転モビリティの視覚表示研究(企業との共同研究)
名城大学情報工学部の学生たちの印象を教えてください。
控えめでおとなしく、余分なことを言わず、衝突を避ける傾向を持った人が多い印象があります。従来型の日本のサラリーマンエンジニアとしては望まれるタイプで、重宝されるでしょう。
ただ、今後の不透明で混沌とした時代や、国際社会との連携などを考えると、求められるのはおそらく、自分の考えや意志をもち、臆することなく前に出て、自己表現できる人材です。学生時代に存分にトレーニングを重ねて、姿勢を身につけてほしいです。
海外研修でAI開発スタートアップ企業を訪問(シンガポール、2019年8月)
情報工学は道具であり、社会課題と結びついて初めて世の中の役に立ちます。そのため、「グローバルゼミナール」では海外研修を企画・引率し、日本で暮らしていると気づきにくい衝撃的な価値観や考え方に触れ、多様な社会課題を知り、自分が住む世界の立ち位置を振り返る機会を提供しています。海外研修は2015年から継続していて、多くのグローバルエンジニアが巣立っています。
2023年度の研究室のメンバーと。「川澄研」「感性研究」のイニシャル「K」を掲げて。