学部では「データサイエンス基礎」「プログラミング演習III」「情報工学実験I」、大学院では「画像情報システム特論」を担当されている寺本篤司先生に、ご自身の研究と学生たちの印象についてお聞きしました。
医療データを紹介する寺本篤司先生
先生の自己紹介をお願いします。
本学の卒業生で電気電子工学科を卒業しました。大学院を卒業後、企業に就職して研究開発のお仕事を10年ほど経験しました。そのあと、医療系の大学に異動し、2023年度からこちらの名城大学情報工学部に着任しました。学生時代からものづくりやコンピュータが好きで、小学生のころから電子工作やプログラミングをしていました。
いまでも趣味は大きく変わりませんが、いまハマっているのは自作キーボードです。キースイッチやキーキャップを色々買ってきて、自分に合う部品の組み合わせを探索している最中です。
先生の専門分野とその面白さを教えてください。
専門分野は医療AIです。病院で収集された患者さんのレントゲン画像やCTスキャンの画像などの医療データをAIで解析して、病気を検出したり、病気を細かく分類したりする手法を開発しています。様々な画像処理テクニックやAI技術を導入して、人体の2次元や3次元画像を処理し、結果を導きます。
注意すべきは、AIが最終診断を行うわけではなく、医師がAIの解析結果を参考にしながら診断を下すということです。コンピュータが支援しながら診断を行うことから、医療AI技術のことを「コンピュータ支援診断技術」( Computer-Aided Diagnosis)とよぶこともあります。
この研究の最大の魅力は、自分たちが得意とする情報工学の技術で人の命を救うお手伝いができることです。医師や医療スタッフの方達と一緒に研究を進め、今まで簡単には診断できなかったものがAIによって可能になったときの喜びは、言葉で言い表せません。
もう一つの魅力は、最新のAI技術に触れられることです。研究室にはAIの研究に必要な高性能なコンピュータが大量にあり、最新のAI技術を惜しみなく利用して、少しでも患者さんの診断や治療に役立つ情報を引き出せるよう、学生達と頑張って研究しています。
最近の研究テーマを教えてください。
最近は生成系AIの研究をたくさん手掛けています。例えば、医用画像から診断レポートを自動生成する研究を行っています。胸部のレントゲン撮影は皆さんが定期的に受けられている検査だと思いますが、それを医師は1つ1つチェックして、診断レポートを書いています。この作業は普段から忙しい医師にとって大変な作業です。そこで、AIに胸部レントゲン画像を入力して画像解析し、GPTなどの自然言語処理用のAIを使って、診断レポートを自動生成する研究を行っています。
また、その逆の研究として、画像生成AIの技術を使って医師の作成した文章から医用画像を生成する研究も行っています。これは患者のプライバシー情報を気にすることなくAIのための学習データを作るのに役立ちます。
学んだことや身につけたスキルは、卒業後にどのように役立つのでしょうか?
大学では、情報工学に関する基礎知識を幅広く学びます。情報の世界は技術の移り変わりが非常に早いですが、大学で学ぶ基礎的な技術は皆さんが社会で活躍する際の土台になるものです。時代が変わっても普遍的なものが多く、どの分野へ進んだ場合にも役立ちます。
また、高学年では座学だけでなくグループ学習などを通じて課題解決能力を養いますが、これは社会に出て実際に自分がプロジェクトの一員になって働くときにきっと役に立つと思います。
現在、生成AIでもある程度のプログラムが書けるようになってきましたが、大学で修得した基礎知識や実践能力をベースに生成AIを利用することで、さらに高度な研究開発が可能になると思います。
名城大学情報工学部の学生たちの印象を教えてください。
知的に物事を進める学生さんが多い印象です。何かを指示してもすぐに行動に移すのではなく、一度冷静に調査を行ってから作業に取り掛かる学生さんが多いように感じます。まだこちらに着任してから時間が経っていませんが、名城生の良いところをどんどん引き出せるような指導をしていきたいと思っています。