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「モノの魅力や美しさを定量化する」川澄未来子先生に聞く。

感性工学・情報デザイン 研究室 / 川澄未来子 教授

「モノの魅力や美しさを定量化する」川澄未来子先生に聞く。

学部では「感性情報処理」や「グローバルゼミナール」、大学院では「視覚・色彩情報処理論」を担当されている川澄未来子先生に、ご自身の研究と学生たちの印象についてお聞きしました。

2020年度の研究室のメンバーと一緒に。川澄未来子先生(右)

 

先生の自己紹介をしていただけますか?

学部は数学科、大学院は物理情報システム専攻の出身です。豊田中央研究所(トヨタグループの研究所)でニューラルネットワークや色彩情報処理の研究に12年間携わった後に大学教員になりました。

研究でも私生活でもタイやシンガポールを頻繁に往復しているので、情報工学部の海外研修の企画・引率も担当しています。名古屋は小中高校生活を送った地元です。学生時代は体育会ホッケー部、企業時代はスキー部、最近はゴルフや自転車、と体を動かすのが好きです。

愛車のBROMPTONで研究室に出勤することもあります。

先生の専門分野とその面白さを教えてください。

専門は、人間の感覚や感性をモノづくりに活かす「感性工学」です。扱う対象は、クルマ、家電、照明、通信デバイス、Webサイト、化粧品、農作物、街の景観、スマートシティなど多様で、企業や自治体など学外の組織と共同で進める研究が多いです。

研究室側が有する感性計量化・分析・設計の技術(シーズ)と、学外の社会課題(ニーズ)とがうまく結びついて、共通の目標を協働して成し遂げた時、大きな醍醐味とやりがいを感じる分野です。

 

 

最近の研究テーマを教えてください。

自動車部品メーカとは、車室内の照明空間における感情の変化をVRゴーグルを使って調べる研究、材料メーカとは、多層クラッド鋼によるダマスカス模様の包丁に新たな感性価値を付加する研究などに取り組んでいます。

VRゴーグルを使った照明空間の感性評価研究(企業との共同研究)

 

包丁の外観にこれまでにない価値を付加する研究(企業との共同研究)

 

愛知県農業総合試験場とは、特徴的な肌色の表面色を持つ名古屋コーチンの卵の色彩を測定した時に魅力スコアを視覚的に示すシステムを開発中です。感性の中では捉えるのが難しいとされる「美」を定量化・モデリングする研究にも取り組んでいます。

名古屋コーチン卵殻測色システムを試作(愛知県との共同研究)

大学で学んだ専門分野や身につけたスキルは、卒業後にどのように役にたつのでしょうか?

4年生以降の研究活動では、エンジニアとして社会生活で必要となる一連のプロセス(従来研究の調査、仮説の立案、実験の企画、方法の選定、結果の科学的な分析や考察、報告の執筆、スケジュールや予算の管理など)を経験します。

情報共有やディスカッションを繰り返しながら、道なき道を切り開くのは容易ではありませんが、学外の研究者と繋がりながら、役割を決めてグループで成し遂げる経験は、どの分野の社会でも即戦力となります。

歩行者とコミュニケーションする自動運転モビリティの視覚表示研究(企業との共同研究)
歩行者とコミュニケーションする自動運転モビリティの視覚表示研究(企業との共同研究)

名城大学情報工学部の学生たちの印象を教えてください。

控えめでおとなしく、余分なことを言わず、衝突を避ける傾向を持った人が多い印象があります。従来型の日本のサラリーマンエンジニアとしては望まれるタイプで、重宝されるでしょう。

ただ、今後の不透明で混沌とした時代や、国際社会との連携などを考えると、求められるのはおそらく、自分の考えや意志をもち、臆することなく前に出て、自己表現できる人材です。学生時代に存分にトレーニングを重ねて、姿勢を身につけてほしいです。

海外研修でAI開発スタートアップ企業を訪問(シンガポール、2019年8月)

 

情報工学は道具であり、社会課題と結びついて初めて世の中の役に立ちます。そのため、「グローバルゼミナール」では海外研修を企画・引率し、日本で暮らしていると気づきにくい衝撃的な価値観や考え方に触れ、多様な社会課題を知り、自分が住む世界の立ち位置を振り返る機会を提供しています。海外研修は2015年から継続していて、多くのグローバルエンジニアが巣立っています。

2023年度の研究室のメンバーと。「川澄研」「感性研究」のイニシャル「K」を掲げて。