「歌声と歌唱方法から歌手の個人性を明らかにしたい」鈴木千文先生に聞く。

今回は、坂野研究室出身で、大学院の博士課程まで修了し本学の都市情報学部の教員になられた鈴木千文さんに、学部及び院生時代の学びの思い出と現在の研究や教職についてお聞きしました。

鈴木千文さん

 

学生時代の研究テーマを簡単に説明していただけますか?(所属研究室も含めて)

私は声の個人性に興味がありこれについて研究をしたいと考えたため、音・音声信号処理を専門としている坂野研究室を選びました。研究のテーマは、歌手の個人性についての分析をするために、物真似した歌声の特徴を分析するテーマを選びました。

 

その研究を始めた(選んだ)きっかけはありましたか?

話し声の個人性の研究は比較的多くあったので、あまり研究としてやられていない歌手の歌い方の個人性に関する研究を始めることにしました。

 

最近の研究テーマと目標を教えてください。

最近では、これまで分析対象としていない歌唱方法の歌声の分析を主に行っております。
目標は、さまざまな歌唱方法における歌手の個人性を解明することです。

歌声のビブラート部分において、声の高さ(基本周波数)の時間変化が歌手によってどのように違うかを可視化した図。歌手によって、ビブラートの時間変化が異なることが分かる。
歌声のビブラート部分において、声の高さ(基本周波数)の時間変化が歌手によってどのように違うかを可視化した図。
歌手によって、ビブラートの時間変化が異なることが分かる。

 

都市情報学部で現在担当されている専門分野は「音・音声信号処理」となっていますが、どんな科目(講義・実習など)を担当されているのでしょうか?

科目名は「認知と情報処理」です。内容としては、音全般の講義となります。身近な音である人の声について扱う回では、どのように声が生成されているのかや話す人によってどのような特徴があるのかなどを説明しています。それ以外では、声以外の音について構造を説明したり、音を聞く器官である耳の構造についての説明もします。

 

都市において音情報はどのような役割を果たしていると思いますか?

音は都市環境の特徴を表すものであると考えております。例えば、車が多い環境では走行音も多くなりそれが騒音として問題視されたり、人口が少ない環境では、人の話し声や生活音が少ないために静かな環境となっています。音は身近にあるからこそ都市環境を反映する一つのバロメータであると思っています。

 

都市情報学部の学生さんたちは、具体的にどのような研究に取り組んでいるのでしょうか?

私のゼミでは、「音について興味のあること」を学生さんに各自で考えてもらい、それを研究テーマとしています。最近の研究では、野球やバドミントン、バレーなどスポーツで発生する音の分析をしたり、アイドル歌手やバンドのボーカルの歌声について特徴を分析する研究が多いです。肉を焼くときの音についての研究も印象に残っています。

都市情報学部 鈴木千文ゼミナールの学生さんの発表風景
都市情報学部 鈴木千文ゼミナールの学生さんの発表風景

なぜ大学の教員になる道を選んだのでしょうか?

大学入学時から音声関連の研究をしたいと考えており、希望通りに研究室に入ることができました。大学院に進学して研究を続けていた時に、これからもこの研究を続けたいと考えたことが理由の一つです。また、最初は講義をすることや学生を指導することは考えてもいませんでしたが、自分が研究を続けていくうちに自分の経験を踏まえて教える立場になってみたいと考えるようになったことがきっかけです。

 

都市情報学部の学生さんは情報工学科の学生さんと似ていますか?違うなぁと感じるところはありますか?

情報工学科では研究室の学生さんの印象として、先生にゼミで指摘されたことを解決するために研究に一生懸命取り組んでいた人が多かった印象があります。また、都市情報学部の学生さんも授業中に課した演習課題に一生懸命に取り組むところが情報工学科の学生さんと似ていると感じます。

旭・坂野研究室のゼミナールに参加 左:旭先生・手前:坂野先生・右:鈴木千文さん
旭・坂野研究室のゼミナールに参加 左:旭先生・手前:坂野先生・右:鈴木千文さん

 

教員になってから、苦労していることはありますか?

最初は講義の進め方や難易度はかなり悩みました。特に初年度の前期はコロナの影響ですべての講義が対面でできなくなったので、学生さんの雰囲気も分からず、講義資料を作っては提供してを繰り返していました。後期から対面授業が徐々にできるようになり、学生さんの雰囲気も分かってきたのでだいぶやりやすくなり、最近ようやく慣れてきました。

 

自分の学部時代、院生時代のどちらでも、何か印象深い思い出やエピソードはありますか?

大学院の修士課程で初めて学会に参加した時に、同じ分野の研究についての発表をたくさん聞き、いろいろ刺激になったことだと思います。普段は一人でPCに向かい研究をやることが多いので、同じ年代の方々がどのような研究をやっているのかなど知らないことをいろいろ知ることができました。

旭・坂野研究室のゼミナールに参加 坂野先生と共にコメントする鈴木千文さん
旭・坂野研究室のゼミナールに参加 坂野先生と共にコメントする鈴木千文さん

 

どんな学生でしたか?

研究室に配属される前は、数人の友達と一緒に授業を受けていました。研究室に配属されてからは、研究室に女子が私だけでしたので、黙々と研究室に来てはPCに向かって作業している学生でした。大学院の修士課程では、進学した同期がいたので研究の話やそれ以外でも盛り上がって話したりしていました。

 

大学院に進学してよかったことはなんですか?

大学入学時から音声の研究をやりたいと思っていたので、進学して自分がやりたかったことを続けることができたことが良かったです。

旭・坂野研究室のゼミナールに参加 質問する鈴木千文さん
旭・坂野研究室のゼミナールに参加 質問する鈴木千文さん

 

どんな人に大学院進学を薦めたいですか?

大学院では、学部生の時よりも研究の時間が多くなると思うので、研究を続けたいと思う人に薦めたいです。

 

情報工学科の後輩たちにメッセージをお願いできますか?

大学生活は長いのでいろいろなことに挑戦して、自分が夢中になれるものを見つけてください。

「コロナ禍を乗り越えた仲間との出会いと学び」林 樹里さんに聞く。

コロナ禍というハンディを乗り越えて、HackUなどの多くの学内イベントに参加し、研究ではAIを使った乳がんの画像診断で、IEEE名古屋支部学生奨励賞を受賞した林 樹里さんにお聞きしました。

HackUで発表する林 樹里さん

 

大学のイベントにも積極的に参加していて、共同作業が好きとのことですが、中学や高校時代からそうだったんでしょうか?

中学校まではバスケットボール部で、いろんな行事で仕切ったりしていたんですけど、高校はハンドボール部に入りました。ハンドボール部はバスケットやバレーよりも、マイナーなスポーツだからいいと思ったんですけど、たまたま経験者が数人入ってきてとてもハードなクラブ部活動を過ごしてました。

情報工学科を選んだ理由を教えてください。

特にプログラミングをしていたというわけではないんですけど、情報工学は、今ではどんな分野でも含まれているので、たくさんの可能性があると思って選びました。

大学に入ってすぐにコロナ禍が始まって、今までの大学生活ではなかったと思いますがどうでしたか?

入学する前に流行が始まって、大学に入学してから最初の頃は、ほとんど大学に行けずオンラインの授業でした。友達をつくるのが難しく、友達に授業内容を聞けなかったので、とても苦労しました。その間、高校時代の友達とオンラインで話をしたりして過ごしていましたね。

どのようなことをきっかけに友人やネットワークができたんでしょうか?

1年生のときにHack U2020(学生ハッカソンイベント)に参加して、お散歩支援サービスを考えて、デザインとプレゼン発表を担当しました。そこで上級生や同級生に出会い、交流が広がりました。

HackUのチームメンバーと
HackUのチームメンバーと

そこで会った先輩に誘われて、プログラミング・サークルの立ち上げも行いました。4年生のときにもHack U2023に参加し、データベース管理と発表を行いました。それから研究室での交流も大きかったです。

授業ではどんなことに関心を持ちましたか?

画像処理や自然言語処理が面白いと思いました。そんなこともあって、卒業研究では画像診断をやっていた寺本篤司先生の研究室に入りました。

どのような研究をしたのでしょうか?

寺本先生は、私が4年生のときに藤田医科大学から着任されたこともあって、藤田医科大学病院など、多くの医療機関と共同研究を行っておられました。それで研究室の学生はさまざまな部位の画像診断に取り組んでいたんですが、私が女性だったこともあって、乳がんの画像診断を勧められました。

IEEE学生奨励賞を祝して。寺本先生と
IEEE学生奨励賞を祝して。寺本先生と

そこでマンモグラフィ(乳房専用のX線撮影)で取得した乳がんの画像から従来の畳み込みニューラルネットワークや新しいAI技術として注目されているVision Transformerを用いた画像診断の研究を行いました。卒業論文では乳房PET画像を用いたんですが、まだまだ利用者が少ないこともあって、CycleGAN(Cycle-Consistent Generative Adversarial Network)を使って画像を生成することで、高集積部位を自動検出して有効性を確認しました。

この研究をしていてどのような部分が面白いですか?

通常の画像診断とは違って、1mm以下のような体の部位の細かな特徴を解析しなくてはならないので、その小さな変化をAIによって発見できるようにするのが面白いと思いました。

また、医師による画像診断は、通常ダブルチェックをするのですが、AIによる画像診断を導入することで、医師の診断レベルの差による漏れを防ぎ、人の労力を減らすことができるのではないかと思います。

2024年2月には、IEEE名古屋支部学生奨励賞を受賞されましたね。

ありがとうございます。受賞したのはマンモグラフィを用いた研究で、PETを用いた研究も、The 3rd ICRPT(放射線技術と医学物理学の国際会議)で発表する予定です。そのために英語も勉強中です。

英語プレゼン研修の模擬発表光景
英語プレゼン研修の模擬発表光景

卒業後は大学院に進むとのことですがどのようなことをする予定ですか?

乳がんの画像診断の研究は続けたいと思います。今回は2次元に変換して診断したので、3次元画像からの診断にも挑戦したいと思っています。私たちの時代はコロナ禍で実践の経験が足りないと感じているので、できるだけ具体的な研究をしていきたいです。

その他は、英語のトレーニングと、ウェブやサーバーの技術も身につけたいのでフィリピンにIT留学する予定です。これからの時代は、外国の企業に勤めなくても、いろんな国の人との仕事も増えると思っています。

将来はどのようなことをしたいですか?

まだはっきりと決めてないですが、一人でやるよりはチームでやることに魅力を感じたので、大学院で研究する中からいろんな出会いがあればと思っています。

旅行も好きなようですね。

そうですね。知らない地域に行って新しいことを知るのが好きです。研究室の旅行では、伊勢神宮に行く計画を立てました。

オープンキャンパスではAIの解説をしてくれましたね。

はい。まだよくわかっていない高校生にAIのことを説明するのは苦労しましたけど、いい経験になりました。高校生や保護者の皆様に、名城大学の良さを知ってもらうと同時に情報技術の楽しさや素晴らしさを知ってもらう手伝いができてとても嬉しく思っています。

オープンキャンパスでAI講座1を担当する林さん
オープンキャンパスでAI講座1を担当する林さん

これから名城大学を受験する人達、入学する人達にアドバイスはありますか?

名城大学は、周りに学べる環境がたくさんあり、自分が学びたいと思ったらすぐに活用できる機会が提供されていると思います。

私たちの時代は、コロナ禍で制限があって大変でしたけど、オンラインによる新たな学習・研究環境ができたという面もあると思います。これからは両方の利点を生かせるのではないかと思いますので、一緒に活動できるのを楽しみにしています。

卒業式を祝して。寺本先生と
卒業式を祝して。寺本先生と

「要件定義から設計、開発、保守までを行う幅広いシステムエンジニアに」加賀有紗

名城大学在学中は、ニュージーランドへの留学や海外での活動を通して視野を広げ、研究室では色彩情報が人の感情に与える効果などを研究。2019年4月に入社した株式会社エヌ・ティ・ティデータ東海では、1年目から金融機関向けシステムの開発・保守運用を担当している。

 

情報工学の学びだけではなく、海外での経験も重ねた大学時代

「情報系をやっておけば就職しやすそう」という気軽な気持ちで情報工学科を進学先に選んだため、正直な話をすると入学当初は講義もすべて「難しい…!」と思いました。今振り返ると、「勉強していて良かった」と思えることばかりなのですが、プログラムを書く宿題が出る講義などでは毎回苦労したものです。

一方で、もともと英語や国際関係に興味があったこともあり、1年間休学をしてワーキングホリデーでニュージーランドに行きました。語学力を身につけること以上に、海外での暮らしに興味があり、その経験を通じて自分の幅を広げたかったからです。

将来を考えると語学力は強みにはなるけど、一番の武器にはなりにくい。語学は、何か別の技術や学びと組み合わせることで力を発揮するものだと思います。大学で情報工学の知識や技術を身につければ、語学力や海外での経験を組み合わせて活かすことができる。そう思ってからは日ごろの講義も前向きに取り組めるようになりました。

研究室の担当教員だった川澄先生には、研究室での学びだけでなく、さまざまな体験をする機会をいただき、とてもお世話になりました。先生の紹介で小学生の海外キャンプの引率役を任されたときは、海外のパワフルな子どもたちをまとめるのにとても苦労しましたが、子どもとの接し方や語学力の向上など、自分で成長を感じた瞬間もあり、すごく良い経験ができたと感謝しています。

 

要件定義から設計、開発、保守までを行うシステムエンジニア

現在はエヌ・ティ・ティデータ東海でシステムエンジニアとして、金融機関向けシステムの開発・保守運用を担当しています。お客さまの要望に応じてシステムを一から作るのはもちろん、これまで何十年とかけて使われてきた基幹システムの保守運用、改善も行っています。3年目を迎える今、ようやくエンジニアとしてスタート位置に立てたと実感しているところです。プログラミングの基礎は大学で身につけていましたが、金融のことは何も知らなかったので、入社して1・2年は勉強の日々でした。

ただ、新人のうちから金融機関内の機器管理システムを自分で一から手掛けることができたのは大きな財産になったと思います。まだ入社して間もないにもかかわらず、要件定義や設計という上流工程から、開発、最後の工程となる保守の部分まで関わらせてもらえることはなかなかありません。小さなシステムではありましたが、就職活動中から幅広い領域の業務に携わりたいと考えていたので貴重な経験でした。お客さまからも感謝の言葉をいただけたこともうれしかったです。

最終的には設計などを専門にやっていきたいと思っているのですが、開発や保守の部分が理解できていなければ良いシステムは作れません。あまり幅広い業務に携わるとそれぞれが浅い知識になってしまうという危惧もありますが、それよりはまず全体の流れをしっかりと理解したいと思います。

基本的な計算のプログラムが塊になって、一つのシステムが完成する。一つ一つは単純な部品だけれど、それが組み合わさることでさまざまなことができる。完成したシステムを見ていると、それがこの仕事の面白さだなと感じます。

 

情報や人をつなげる仲介役として、できることを増やす

エヌ・ティ・ティデータ東海は通信からスタートした会社です。通信は情報をベースにさまざまなことを結びつけ、仲介する役割を持っています。事業がそういう性質だからなのか、会社の部署を見渡してみるとお客さまに合わせてやり方を変え、仲介役として人に合わせるのが上手な人が多い印象があります。私自身、昔からそういうタイプなので今の会社にすっと馴染めたのかもしれません。

今は金融機関向けのシステムを開発していますが、法人系や車の部品、国や県などの行政、病院などの医療機関、教育機関など、さまざまな業界のシステム開発に携わって自分ができることを少しずつ増やしていきたいと思います。

また、開発とは別に人事などの仕事にも興味があります。仕事をする中で何かと仲介役になることが多いため、人と人をつなげる仕事もやってみたいと考えています。

また、コロナ禍で、コミュニケーションを直接取る機会が減っている今、ますます人と人をつなげる重要性を感じています。社内レベルでも共通認識を持つのが難しいと思うことがあるので、とにかく話す、コミュニケーションを意識的に取りながらつながりをつくるように気をつけています。

名城大学は、学ぶ環境が充実していて、一人でじっくり集中できる場所もあれば、仲間と一緒に勉強できる環境もあります。そういう環境が揃っているのは本当にありがたいと卒業後に実感しました。受験生のみなさんは辛いときもあるかと思いますが、努力し続けた経験は自分に自身を与えてくれると思います。頑張ってください。

【取材日】2021年2月13日

 

「多くの人に愛される、新しいゲームの開発に携わりたい」河合秀樹

名城大学在学中はバーチャルリアリティ(VR)研究室に所属。4年生のとき「第24回国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト (IVRC 2016)」の決勝大会に進出し、協賛企業賞を受賞。大学院で学びを深め、2019年に株式会社エイチームに入社。ゲームプログラマーとしてスマートフォン向けゲームの開発に携わる。

 

「触覚系VR」の存在を知り、学びを深めようと大学院へ

物心がつく前からずっとゲームが好きで、中学卒業の頃には「ゲームをつくる仕事がしたい!」と思っていました。プログラムを書くことができればゲームづくりに携われるだろうと、インターネットで調べながら自分でプログラムを組むようになり、進学先もプログラミングが学べる情報工学科を選びました。

1・2年生の頃は座学が中心だったので、実を言うと授業には興味が湧きづらかったのですが、それが変わったのは、4年生で柳田先生の研究室に配属になり、触覚系VRを体験してからです。VRというとゴーグルを付けて視覚で体験する、というイメージでしたが、触覚までもが仮想体験できることに面白さを感じました。そして、国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト(IVRC)というコンテストに参加するなど、実際にモノづくりをするうちに「VRについてもっと踏み込んで学びたい」と、大学院へ進むことを決めました。

大学院では、布の手触りを体感できるVRの研究や、手袋をしていても素手と同様の触覚を体感できるシステムの研究などに携わっていました。後者は他大学の研究室との共同研究だったので、コミュニケーションの大切さも学ぶことができたと思います。

 

ユーザー様の声に向き合い、より良いゲームに

現在は、エイチームのゲームプログラマーとして、スマートフォンゲームの運用と新規機能の開発に携わっています。今、私が担当しているのは長年のファンの方も多い既存のゲーム。ゲームプランナーから「こういう機能を追加したい」と上がってきた要望に対して、スマートフォンのスペックで実現できる機能かどうかをチェックし、実際にプログラミングを行うとともに、出来上がったものが問題なく動作するかの評価も行っています。

大学院での研究テーマであった「VR」と直接的につながっているわけではありませんが、さまざまなプログラミング言語に触れることで身につけた汎用的なスキルが役立っています。また、複数の研究を並行して進めた経験が、複数のタスクを同時に進めなければならない今の仕事で活かされています。

やりがいを感じるのは、自分が実装した機能がリリースされて、ユーザー様から良いコメントや反応をいただいたときです。新機能をリリースした直後はSNSをまめにチェックして、「この機能便利!」「追加機能良かった」という書き込みを見るとうれしいですね。

逆に、ユーザー様からのマイナスの評価も大切にしています。そういったお声は、不具合につながっていることが多いため、問題点を改善してユーザー様がゲームをより楽しめるようにすることも私の役割だと思います。私だけでなく、会社全体がユーザー様と真摯に向き合い、より良いサービスを提供するというスタンスで取り組んでいます。

 

開発チームをリードできるプログラマーをめざして

プログラマーは勉強し続けなければ成長しません。どうすればプログラミングのスピードや効率を上げられるかということは常に意識しています。また、一つのゲームにたくさんのゲームプログラマーが携わるので、自分だけではなくほかの人が見ても分かりやすいプログラムを書くように心がけています。

また、コロナ禍に直面し、コミュニケーションの大切さも改めて実感しました。会社で仕事をしていれば、疑問点があってもすぐにほかの社員に確認ができるのですが、在宅勤務になってからはプログラマー間で認識のずれが生じやすく、結局プログラムの書き直しが発生してしまったこともありました。それからは細かいことでもチャットやテレビ会議をつないで意識的にコミュニケーションを取りながら進めるようにしています。

今は既存ゲームの開発を担当する中で、長く愛されるゲーム運用のノウハウを学んでいます。業務以外でもスキルアップを図り、次のステップとしては新規ゲームの開発に携わりたいと考えています。ゲームをプレイする誰もが満足できる操作性に優れたゲームを開発したいですし、開発チームを引っ張る存在になりたいです。

【取材日】2021年1月22日

 

「人々や世の中に影響を与えられる技術者に」髙尾凌我

名城大学在籍時には、「プログラミングコンテストを通じたITエンジニア育成プロジェクト(以下ITエンジニア育成プロジェクト)」や学部横断型のオナーズプログラム「名城大学チャレンジ支援プログラム」をはじめ、学内外でさまざまなプロジェクトに積極的に参加。2021年4月、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下日本IBM)に入社し、顧客企業の業務を効率化するためのシステムの導入やサービスの構築に携わる。

 

自分を成長させてくれた先生や友人との出会い

実は大学に入学するまで、パソコンは「情報」の授業でさわる程度でした。そんな私がなぜ情報工学科に進んだかというと、IT企業が舞台のテレビドラマを見て「プログラミングができたらかっこいいな」と憧れたから。それに加えて、当時は特になりたいものが見つからず、進路をあれこれ思案しているうちに「情報系の技術はあらゆる分野で求められているし、これからはプログラミングが大事になる」と考えたことも大きな理由です。

入学当初、パソコンのスキルはほとんどなかった私ですが、今、プログラミングが得意だと自負できるまでに成長できたのは、情報工学科が始めた学びのコミュニティ創出支援事業「ITエンジニア育成プロジェクト」に参加したことや、情報工学科の先生との出会いを通じて、学びへの取り組み方を変えられたからだと思います。

取り組み方を変えるまでの私は、将来に対する具体的な考えがないにもかかわらず、「良い成績を取りたい」と言ってみたり、勉強会にたくさん参加して「スティーブ・ジョブズになる」と言ってみたり、大きな目標を掲げる一方で、目的が伴っていませんでした。それが変わったのは、2年生のときに学科主催の「グローバルエンジニア研修」担当の川澄先生から投げかけられた「君はいったい何がしたいの?ちゃんと考えている?」という言葉。その言葉をきっかけに「自分は何がしたいのか」と目的をしっかり考えるようになり、参加したハッカソンなどでも次第に賞をいただくようになりました。

チャレンジ支援プログラムで出会った他学部の学生や、グローバルエンジニア研修で出会ったタイやミャンマーの学生から大きな刺激を受けたことも大きな成長につながったと思います。名城大学はチャレンジしたい学生への支援がとても手厚く、たくさんの挑戦する機会とサポートを与えてくれたので、とても感謝しています。


お客様の課題を解決するシステムを構築

日本IBMに入社を決めたのは、2年生の終わりに参加した勉強会の講師が日本IBMの社員の方で、面白そうなことをやっている会社だなと思ったからです。3年生の夏休みにはインターンシップに参加して多くの社員のみなさんから話を聞く中でますます興味を持ちました。

また、ハッカソンでモノづくりに取り組む際に日本IBMが開発したAIシステム「Watson」をよく活用していたため製品にも馴染みがありましたし、グローバルな仕事ができることや充実した研修システム、他社の技術を積極的に活用していることも魅力でした。

職種は「ITスペシャリスト」で、お客様の課題解決や業務の効率化に役立つシステムやサービスを構築する仕事です。要件定義からシステム設計・構築、運用・保守までお客様とコミュニケーションを取りながら、プロジェクトを進める、システムエンジニア兼コンサルタントのような役割を担います。まだ入社したばかりで実際の仕事には携わっていませんが、さまざまな仕事に関わっていきたいと思います。


仕事を通じて成長のきっかけを与えられる人間に

これからの目標は仕事を通じて出会った人はもちろん、その周囲の人々にも影響を与えられる技術者になること。大学時代、チャレンジ支援プログラムでは、日本IBMのサービスを学び合うコミュニティを立ち上げて活動していたのですが、この活動を通じて「DevRel(Developer Relations)」という開発者向けに自社の技術やサービスを広めるマーケティングの手法を知りました。ITスペシャリストとしてお客様に貢献することはもちろん、開発者側とつながりを持てる「DevRel」にも携わることで、誰かの学び・気づきにつながることができればと考えています。

私自身、人との出会いに恵まれ、成長のきっかけを与えられてきたので、これからは成長のきっかけを与えられる仕事ができる人間になりたいです。まずは日本IBMでさまざまなことを経験し、吸収して、自分自身が成長したいと思います。

情報工学は、さまざまな分野で利用されています。その情報工学を学ぶことは世界の基盤を学ぶことでもあります。まだまだ発展途上のため、深く学ぶことで世界を変えることもできる分野で、何よりとても面白い分野です。ぜひ名城大学で情報工学を学ぶ最初の一歩を踏み出してください。

【取材日】2021年1月22日