長尾茉衣子さんは、藤田医科大学を卒業し、大学院から名城大学に入学して、寺本篤司先生の研究室に所属。医療の知識と最新の視覚言語AIを使用して、患者と医師をサポートする画像診断の研究に取り組んでいます。
長尾さんに、医学系の大学から名城大学大学院に進んだ動機、大学院での研究と学生生活、将来の目標などについてお聞きしました。
長尾 茉衣子さん
学部時代に頑張ったことや研究成果などがあれば教えてください。
私の通っていた大学はほとんどの科目が必修で、平日は授業が詰まっており、試験前には覚えることもたくさんありました。さらに、1限から5限まで続く実験が週に複数回ある時期や、病院実習などもあり、レポートにも常に追われていたことを覚えています。そのような中でも、一つひとつの課題に向き合い、やり切る力を身につけられたことは、学部時代に頑張ったことの一つだと思っています。

修士課程に進学を決めた理由と、名城大学の大学院を選んだ理由を教えてもらえますか。
修士課程に進学を決めた理由は、自分が取り組みたい研究を深く追求したいと思ったからです。私が高校生の頃、医師から父に肺がんの疑いがあると言われたことがありました。しかし、当時は別の病気を患っていたこともあり、がんの確定診断に必要な生検のような身体への負担が大きい検査を受けることが難しい状況でした。
その経験をきっかけに、肺がんの診断を少しでも負担の少ない形で支援できる方法がないのかと調べる中で、寺本先生の研究室でAIを用いたがん診断支援の研究が行われていることを知り、自分もこの研究に携わりたいと思うようになりました。医療系で学んできた自分が、情報系の知識や技術を身につけながら、医療AIの研究に本格的に取り組める環境があると感じ、名城大学の大学院への進学を決めました。
現在取り組んでいる研究テーマについて説明してください。
現在は視覚言語AIモデルを用いて肺がん診断支援技術の開発を行っています。肺がんは早期に発見して治療することが重要ですが、X線やCTなどの画像だけで正確に診断するのは難しいという課題があります。
そこで、私の研究では胸部CT画像から診断レポートを自動生成し、良悪性鑑別も行えるような技術の開発を進めています。また、単に文章を生成するだけでなく、画像に対して質問を与え、その内容に応じた回答を生成する対話型のシステム(Visual Question Answering: VQA)も開発しています。

そのテーマの面白さや、取り組んでいて得られる醍醐味はどんなところですか。
この研究の面白さは、ブラックボックスになりやすいAIの判断を、文章で示せるところにあると思います。例えば、裁判で判決が「有罪」とだけ示されても、その理由や根拠がわからなければ誰も納得することはできません。どの証拠が、なぜその判断につながったのかが重要になります。医療AIも同じで、腫瘍が「良性」や「悪性」とだけ判定されても、その根拠が分からなければ、医師はその結果をそのまま信用することはできません。私の研究は、AIが画像のどこに着目し、どのような特徴を根拠に判断したのかを、より分かりやすい形で示そうとするものです。AIが画像のどのように見て、どう理解しているのかを確かめられるところに、この研究ならではの醍醐味を感じています。
逆に苦労している点や、失敗エピソードなどあれば教えてください。
苦労している点は、医療系出身で情報系が専門ではなかったので、プログラミングやAIの技術的な内容を理解するのに時間がかかることです。研究を始めたばかりの頃は先輩方の発表や先生の話している内容がすぐには理解できず、自分の知識不足を感じることも多かったです。ただ、分からないことはまず自分で調べて、それでも理解が難しい時は先生や先輩、同期に相談しながら一つひとつ学んできました。今でも難しさを感じることはありますが、専門外だった自分が少しずつ理解を深められていることに、成長も感じています。
入学して1年間で成果(表彰など)があれば紹介してください。
入学してからの1年間で、筆頭著者として英文誌に2編の論文が掲載されました。さらに、国際学会2件、国内学会6件で発表を行い、研究成果を継続的に発信してきました。その中で、日本生体医工学会東海支部大会では研究奨励賞をいただくことができ、大きな励みとなりました。研究活動の成果をさまざまな形で残すことができた1年間だったと感じています。


英語論文の執筆にも取り組んだと聞きましたが、いかがでしたか。次に挑戦したいことはなんですか。
英語論文の執筆については、もともと文章を書くこと自体はあまり苦手ではなかったので、その点ではあまり大きな苦労はありませんでした。一方で、情報工学やAIの技術的な内容については、まだ自分の知識が浅く理解を深めながら書く必要があり、その点は難しさを感じました。ただ、査読を通して、自分では気づけなかった点や新しい視点から研究を見直すことができ、自分の研究を俯瞰して捉えるよい機会になったと思います。
次に挑戦したいことは、研究成果を英語でより的確に、わかりやすく発信する力を高めることです。論文執筆や学会発表を通して、自分の研究の意義や面白さを伝えられるようになりたいです。

研究以外に努力していることや、学生時代に磨きたいスキルなどがあれば教えてください。
今は研究に多くの時間を使っていて、研究以外に十分時間を使えているわけではありませんが、学生のうちに磨きたいと思っているのは情報系の知識やプログラミング力です。もともと情報系が専門ではなかったこともあり、技術的な理解や実装力は、これからもさらに身につけていきたいと考えています。
学部時代にやっておいてよかった、あるいは、やっておけばよかったことがあれば紹介してください。
学部時代にやっておけばよかったと思うことは英語の勉強です。国際学会で発表した際に、自分の言いたいことを思うように伝えられず、もっと英語を勉強しておけばよかったと感じました。研究においては、論文を読むだけでなく、発表や質疑応答など、自分の考えを英語で伝える力も大切だと実感しています。そのため、学部のうちから少しずつでも英語力を身につけておくことは、その後の研究活動に大きく役立つと思います。
1日や1週間の過ごし方を教えてもらえますか。また、休日は何をして過ごしますか。
私は朝があまり得意ではないので、昼頃から研究室に行き、夜遅くに帰ることが多いです。帰宅後や休日も基本的には研究をしていることが多いですが、学会や論文に追われていない時期は、友人と遊びに行ったり、旅行に出かけたりして過ごしています。また、ピアノを小さい頃から長く習っていたこともあり、今でも時々ピアノを弾いて息抜きをしています。
10年後はどこで何をしていると思いますか。
まだ具体的な姿は明確には想像できていませんが、現在取り組んでいる研究は個人的な背景もあって、思い入れの強い分野です。そのため、テーマが変わったとしても、大学や企業の研究者として医療AIの分野に関わり続けていたいと考えています。
人生の目標や夢があれば教えてください。
人生の目標としては、何か特別大きなことを成し遂げるというよりも、自分の取り組みやこれまで積み重ねてきたことが、少しでも誰かの支えや助けにつながるように生きることです。大きな成果は日々の小さな積み重ねの先にあるものだと思うので、自分にできることを一つひとつ誠実に続けていくことを大切にしたいです。その積み重ねによって、身近な人や周囲に良い影響を与えられるような、一隅を照らす存在でありたいと思っています。
また、自分が学んできたことや経験してきたことを自分だけのものにするのではなく、誰かのために生かせる形にしていきたいとも考えています。研究においても、知識や技術を深めること自体が目的ではなく、その先で医療現場や患者さんの助けにつながることに意義があると感じています。現在取り組んでいる研究も、医師の診断や治療を支える一助となり、患者さんや医療現場に少しでも貢献できるものにしていきたいです。
改めて、名城大学の大学院に入学して良かったと思うことはなんでしょうか。後輩に勧めてもらえますか。
名城大学の大学院に入学してよかったと思うことは、専門分野の異なる私でも安心して学びながら、研究に取り組む環境が整っていたことです。私は他大学から進学し、情報工学は専門外でしたが、先生方や先輩方がとても丁寧に指導してくださったので、ひとつずつ理解を深めながら研究を進めることができています。
また、周囲の友人にも恵まれ、わからないことを気軽に相談できる雰囲気だったので、新しい分野に挑戦するという不安の中でも前向きに研究を続けられたと思っています。そのため、名城大学の大学院は自分の専門にとらわれず、新しい分野に挑戦したい人や、研究を深く突き詰めてみたいという人に勧めたいです。分野が違うことに不安があっても、支えてくださる先生方や先輩方、仲間がいるので、安心して学び、成長できる環境だと思います。
